大したことのない話

脳みそに詰まったゴミを吐き出しておく場所

カタシロめいたTPRGリプレイ IN_CA■E 【4】2日目 ①

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■登場人物
・邪悪な心を持つ幼き弱き竜・純(純)
 大学生。事故に遭って、気が付いたら黒い部屋に寝ていた
 他に思い出せないこと:大きなカブのオチ
・カタシロ(カ)
 医者。表面に顔文字を表示する仮面をつけている
 他に思い出せないこと:シャイロックってどこの誰だっけ?
・July
 同じく病院に入院している。事故の被害者だが、その記憶がない
 他に思い出せないこと:サラミとハムの違い

―――目覚ましジャンケン、ジャンケンポン、俺はパーを出したぞ
―――目覚ましジャンケン、ジャンケンポン、俺はパーを出したぞ

自分でも何でこんなアラーム音にしていたのか、不思議でしょうがない。
だがどうしてか、寝起きの頭とは思えないくらい、意識は明朗だ。

同時に、部屋に差し込む日の光に俺は目を覆う。
するすると自動で引っ込むブラインドの向こうにあるのは、外の景色だ。
カタシロはまだいない。
この隙に、外の様子を伺っておくのは、あり寄りの有村架純だわね。

はめ殺しの窓から見える空はうす水色で、雲が右から左へと流れていく。
この部屋は、どうやら都市にそびえ立った高い建物の一室のようだ。
30階ほどの高さにあるらしく、大小さまざまな建物の間をまるで蟻んこのように車が右往左往しているのを見ているだけで、タワマンに住む金持ちが味わっている高所への恐怖と下界の民を見下ろす愉悦とを同時に味わえて奥さまお得ザマス。

・・・・・・・・あれ、車が右車線を走ってないか?


カ:おはよう。いい天気だね。君はよく眠れたかな?
純:およ!

全く気づかなかったが、振り返るとそこには白衣を着た白面の男がいた。
表情もなく、音もなく、相変わらず忍者みたいに、静かに壁にもたれかかって、タブレット片手に腕を組んでいる。
キザなやろーだ、その立ち姿していいのはデータ系の噛ませ犬だけでは?

純:おはようございます、カタシロ先生・・・ですよね?
カ:ああ、カタシロだとも。昨日ぶりだね

まるで卵の殻のような面には、今のところ顔は表示されていない。
が、親しい友人を見かけたかのように、組んでいた両手を広げて上機嫌に聞いてくる。

カ:気分は変わりないかい?
純:不思議なもので、すこぶる元気ですよ。ベッドがいいのかな
カ:ここは病院だからね、「寝心地がいい」は最上級の誉め言葉だよ
純:・・・いくつか聞いていいですか
カ:何だろう、答えられる範囲だといいが

カタシロは椅子に座り、昨日と同じように足を組んだ。
俺もベッドに腰掛ける。

純:この部屋、ドアも開かない、ナースコールもない
  街中の高い場所にあるし、部屋の作りもホテルみたいだ・・・
  はっきり聞きますけど、ここは本当に病院なんですか?
カ:ああ、病院だよ。極力病院に見えないようにしているが、それが、売りなんだ
純:じゃあ事故に遭ったのに点滴もつながっていないのはどう言い訳するんですか
カ:今の君には必要ないからだ

煮え切らない返答だ、いっそ飛び掛かって胸を締め上げて見るか?
立ち上がりゆっくりと近づくと、カタシロも椅子から立ち上がり、後ずさった。

純:・・・この部屋に、閉じ込めてるんじゃないですよね?
カ:まさか!我々こそ、真に君の味方だよ!

カタシロの面には😅と表示され、心外だとばかりに両手を突き出して左右に振る。
真に味方だと?笑わせる。
敵対者なんて今のところ誰もいないが?

カ:それにその、廊下に出たがるのは構わないが、何も面白いものなんてないんだ
 君のためにならないものしかない。少なくとも、今の時点では

表示されている顔のせいもあって、やんわりとはぐらかされている気がする。

純:面白いものを期待しているんじゃないんすよ、出てみたいだけで
カ:今出てったところで、君について一切の保障はできないんだよ
純:はぁ?体は治ってるなら問題ないでしょ?
カ:ここは病院なんだ、他の患者とか、ショックなものを見ることになるかも
  それに君は色々と手続きが必要なんだ、我慢してくれないかな
純:・・・こっちがダダこねてるみたいな言い方は止めろよ、先生

俺の目が疑念に染まっているのに、カタシロも流石に気付いたらしい。
暫く黙ったまま、自分の面の中心を人差し指でトントンと叩いてから、口を開く。

カ:いいだろう、今日の検査が終わったら廊下を見せる、それでどうだろう
純:わかりましたよ、それで手を打ちましょう

カタシロが色白の手を差し出したので、握手に応じるが、不思議と何の感覚もない。
握手はしているという実感はあるのに、握られている力も感じないし、人の温もりも感じない。
まるで幽霊だなんて言ってしまうと幽霊見たことあるのかと言われるだろうが、カタシロの手は想像していた幽霊の感触に近かった。
暖簾に腕押し、ってのはこういう感覚なのかも。

そんなことを想いながらも、俺たちはさっきと同じように椅子とベッドに腰かけて、昨日に引き続き検査を始めるのだった。

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