汁物語②
あたすからもいっごええがね、島岡どん?
何か?
この「一問一答」。すなおにでんと答える気はねんです。だから、とらっせしてくれねか?
スキップはダメです。答えたくなくても、質問は出してもらいます。
無駄やざ
そうでもないですよ。例えば「あなたはカレーは好きですか」という質問にも答えられませんか?
それは・・・好きやけど・・・
ただそれを聞いた誰かは、「カレーの髪があなたに与えた試練だ」と言うこともできるわけです。大分飛躍ですが。だから、あなたが答えたくなければ答えなくていいが、何の質問に答えなかったのかという尾ひれのヒントはもらいたいんです。
・・・わかった。さっさと終わらせよ。
一問一答
あなたは、このスープのおいしさの正体を知っている?
答えない
これ、ドレッシングにしてもおいしいのかしら。私、サラダに掛けて食べてみたくて!
知らんて!
貴方自身は料理はされるんですよね。特異な料理は?
からいもねったぼ
ビーフ・オア・チキン?
ちきん
その訛はわざとですよね?エピソードトークはすらすらと標準語で話されてましたから。
・・・でん、こばしとるやがっちゃ。せんど、こわいからやな。
さっきのスープ、アカミミガメさんは広めたいとは思わないってことですよね?あんなに旨いのに。
広めてはいけない、と思ってる。
ちなみにさ、俺もう一杯貰いたいんだけど、出汁の元とかもらえたりしない?
ほげなこと!あんた、がっちらごんね!なんきいとん!?
(・・・「がっちらごん」?)
えー自分が最後っすか?wwまじかーw悩むなぁwww絶対鉄神屋のあじだったもんなぁwwwじゃあ俺もすでに怪奇現象の登場人物ってことじゃんwwwわはww草wwwじゃあじゃあ巻島って地名に聞き覚えあります?www
・・・いや、いや、嫌、イヤ!
ちょwwwおまwwwまんさん反応しすぎワロタwww感度良好で草wwwwちいかわみてぇww
私は・・・私は行ってない!行ってないし、知らない!
どう考えても知ってるリアクションなんだよなぁwwww
――島岡氏の、遮るような「それでは語り継いでくれる方だけ、行燈の電気を残してください」という合図で、一つ、また一つと明かりが消えていく。
残った灯りは、たったの1つ。
脚色① 摘みたて兄さん
ンま、結論はでてますなwwwはっきり言って、「神屋系」の味と、のれん分けの秘密がこれ、っつーことっしょォ!www
そもそも小生ずっと疑問だったんですなぁwww鉄神屋は確かに「神屋系」最古参にして筆頭ではあるものの、自分で広めたとは一度も言っていないwwけど同じ味が広まりを見せているゥ~~~www
つまり、出汁の材料の販売元こそが「神屋系」の黒幕ンゴねwww要は同じ「うまあじ」で飛ぶように売れるようにしてやるから、「神屋」を名乗って、一大勢力になるンゴと誘われたのだwww俺は詳しいんだwww
で、「神屋系」を広める理由は単純明快www味に病みつきになっちまって、結果「神屋系」を崇め奉ることになるっしょwwwそうでなくてもお金は入って出汁神様を崇め奉れるっつーわけwwつまり、マジ神っつーことでおkwww宗教関係はNGwwwwww
拉麵には~wwそれはそれはきれいな~ww神様が~wwいるんやで~www
幕間
どうでしょう、BBQをするアカミミガメさん。彼の提示した尾ひれはお気に召しましたか?
それは・・・その・・・
――彼の話は、当たらずとも遠からず、的を射かけている。
しかしだ、彼には悪いのだが、これではダメなのだ。
妙に現実味のある話だと、私たちのように誰かが真相を突き止めようとするかもしれない。
そしてその結果が悲劇的なことを、私は知っている。
ちょwおまww選択肢ないっしょ?wwwwだったら俺の考えた結論でいいじゃんwwwいいじゃんwwwスゲーじゃんwwww
そうでなければ、この話は真相のまま、ということになります。
別にそれでいいと思うけどなぁ?謎は謎のままってことだろ?
それだけは、ダメなんです・・・!
あー・・・じゃあその・・・今更なんですけど、自分からも一ついいですか?なんか、このままだと空気悪くなりそうだし。
なんだァ?てめぇ・・・
本当に今さらですね・・・ただ、開始2つ目でぎすぎすされるのも嫌ですし、摘みたて兄さんさんも誰かと戦って得た勝利の方がいいですよね?
おっ、そうだな
では、むちむちキムチさん、よろしくお願いします。忘れずに行燈の光を、灯してくださいね。
脚色②
多分、うまみの原因は、塩なんじゃないかって思うんです。
塩ってとりすぎると体に悪いけど、時々体が強烈に欲しがるじゃないですか。ほら、飲み過ぎた帰り道とか。つまり、人間に塩は本能的に必要だ、ってこと、これに目をつけた科学者、そしてそれを後援するマフィアがいたんです。
そして彼らは作ったんです。味・科学構成・見た目全てが塩だが、麻薬に匹敵する中毒性を持つというドラッグを。SHIOとでも言いましょうか。イイトコの塩だとかなんだとか言って、通常の塩より少しだけ高い値段で売りつけることで、その効能を実験していたんですよ、日本のラーメンと言う一度ハマったら何度も食べに来てもおかしくない文化の中でなら、「麻薬的に美味しい」なんて乾燥が出ても問題ないですからね。
そして一定の成果が見えた。だから、ラーメン以外にも手を出したんです。彼らの目的は・・・マフィアが薬物をさばくのと同じ、活動資金でしょうね。Q.E.D
選出
――むちむちキムチは話す間こちらを一度も見なかった。
少し前かがみになりながら、暗闇に隠れた全員を説得するかのように、真面目で淀みのない静かな口調で言い終えると、緊張の糸が切れたのか、ため息を一息ついた。
「ってことでどうすか」と付け加える彼は、恥ずかしそうにはにかんだ。
こちらを見て「えへへ」と笑う彼に、私はお礼を叫びたくて一杯だったが、ぐっとこらえて小さく頭を下げる。
これなら、筋は通る。
流石に塩を追いかけて「アレ」を見つける、ということはないだろう。
出揃いましたので、この「旨い汁」はどう語り継がれるべきか、BBQをするアカミミガメさんに決めていただきます。どうでしょうか、お気に召したのはどちらでしょうか?
眼鏡の人には悪いけんど、キムチさんの話がいいさ。
(´・ω・`)ウソダヨ・・・
理由を聞いても?
神様なんかよりもマフィアの方が、なんとなく現実味もあるし、手を出しにくいべ?
・・・・・ふむ、そういうことでしたか。それでは実物込みで面白い体験をさせてくれたBBQするアカミミガメさん、ありがとうございました。
――本当にこれでよかったのだろうか。
私は目を瞑り、思案する。
・・・多分、間違ってない、はずだ。
一方でこれが時間稼ぎでしかないこともわかっている。
だが、あの存在を外に漏らすわけにはいかない。
干からびた●●●と放置するだけで人間から「旨い」という感想を奪うのだ、私はあの未来も何も持たない破滅主義者ではないので、はっきり言ってアレが存るという現実に向き合う気に一切なれない。
今でさえ味覚の支配だけで済んではいるが、姿を見たらどうなることやら想像だにできないではないか。
触らぬ神に祟りなしとは言うが、まさにその通りだ。
いや、今こうして考えていることも、導かれたものなのかもしれない・・・
私はそっと、目を開けて、思考を閉じた。
あと8つ、目の前のことに集中するべきだ。
そうすれば、今は、今だけは考えずに済むから。
※ラーメンの神様とSHIOの画像はSatable Diffusionで作成しました。すごいぞAI。